■秋田/森吉山・小又峡ゴルジュ遡行[沢]

期間:2023年8月11日〜12日 ※続いて8月13日、ノロ川トウド沢遡行〜赤水沢下降(日帰り)へ。

形態:沢登り(ゴルジュ突破)

メンバー:ナベ(L・記)、トーマス、見学者S氏


盆前の例会に参加した見学者S氏。沢の経験はあんまないが5.9リードできるというので、落ちたらドボンのゴルジュなら大丈夫じゃね?ということでトーマスさんと相談。せっかく3人いるので、運転の辛い森吉に行くことにした。


8/11 晴れ 小又峡ゴルジュ遡行

7:30 森吉山野生鳥獣センター発→10:30 小又峡・化ノ沢出合→11:40 三階滝下→12:55 三階滝上→15:45 六階滝下(大高巻き開始)→17:40 小又峡・扇ノ沢出合→18:00 幕場

 

10日の20時頃に東川口に集まって、鹿角八幡平インターに降りたのが午前3時頃。森吉方面に直行するとコンビニがないのでちょっとだけ寄り道してコンビニに立ち寄り、日の出前に横になりたいということで4時頃に太平湖グリークセンター駐車場にマット敷いてゴロ寝。シュラフカバーの周りを蚊が集り、とてもうっとおしかったがそれでも2時間寝れた。

再度出発、森吉山鳥獣センター駐車場に車を停めて出発。

 

噂通り小又峡右岸の歩道は登り返しがしんどく、体感的には下りより登りのほうが長い。辛い。

 

化ノ沢出合いに着いて即入渓。用水路のようなゴルジュを泳いだり突っ張ったりしながらジリジリ進む。さっそくアブが集ってきた。そこへ右岸の遊歩道から、遊覧船でやってきたハイカーからガンバコールがかかり、もう何がなんだか(笑)

(なお、最近は先行記録は計画段階でざっと読むくらい。プリントしたりスマホに保存したりして持って行かないので、帰京中にググって分かったのだけれど、当該区間は化ノ堰と呼ばれるゾーンで、みんな遊歩道歩いてますね…)

 

暴走機関車トーマス氏号令の下、化ノ堰を泳ぐ。(右岸に遊歩道がある)

渇水だが結構疲れる

 

三階滝はパッと見左岸の草付から尾根超えだろうとザイルつけて登るがまあまあ悪かった。それよりこの時見学者S氏がフィギュアエイトノットができずエイトノットも怪しいということが分かり、先が思いやられたが行く道は行くしか無いので進む(※ナベが例会で酔っぱらってヒアリングして間違って記憶しただけで、本当は「5.8をトップロープ」だった)。

風化した花崗岩製のすり鉢底のようなゴルジュはザクロ谷の幅を広くしたようで、異様に深い水路は吾妻中津川の白滑八丁を思い起こさせる。

泳いだりへつったり、小滝の側壁を登ったり、ショルダーしたり、小さく巻いたり。甌穴が異様に多く、かつ、深いのが印象的で、釜や滝壺も異様に深い。今回は1週間ほどまとまって降ってないので水は少なめだがそれでも水圧を感じる部分があり、さすが大渓谷といった感じ。S氏がザックがデカすぎて泳いでからの這い上がりがダメで時間がかかる。渡渉とジャンプも慣れてなくてダメ(泳ぐような沢初めてなので当たり前だが。しかし渡渉・ジャンプは二日目から慣れてきてかなり改善。ザックは途中、ナイフで穴を開けたにも関わらず全然水が抜けてなかった…)。しかしヘツリは安定していてその点は本当に良かった。普通は落ちないけど、落ちたら助からないかも知れないなあって釜が所々にあったので…(落ちてもドボンで済むだろう、という見込みで小又峡を選定したが、甘く見ていた)。

なお、巻きは全部念のためロープ出した。あと、途中で右岸巻きから斜め懸垂でスラブをパスした滝があったと思うが写真撮ってないので場所が分からない。

 

三階滝。左岸の草付きから尾根乗っ越し。

ザイル出動したが足並みそろったパーティならギリ不要と思われる。

 

三階滝を越えると絶景としか言いようがないゴルジュが。

ここで右岸斜め懸垂だったっけなあ?

 

左岸高巻き中。甌穴に注目。

こういうのが沢の中にもボコボコあって異様に深い。

 

割と苦労した滝。

中央をショルダーで突破したがラスト(ナベ)を引っ張り上げるのが大変だった。

増水していたら無理ライン。

 

これは簡単に巻いた

 

へつり&泳ぎのオンパレード

 

そんなこんなでかなり時間をかけて六階滝。滝身周辺は全然無理だし、ワンチャンあるかもと思っていた右岸の支流は真っ黒いチムニーとなって屹立していてオブザベする気すら起こらない。先行記録通り右岸から大高巻き。コレは辛い。さっき歩いた所目掛けて高巻きという不合理さも加わり、全員半殺しにされる。暑い。うまく巻き降りるなんてことは一ミリも考えず、登山道を辿って扇ノ沢へ。多分S氏はこういう高巻きは初めてだろうけどよくついてきた。根性ある(普通なら折れてる)。

30メートルザイル二本の懸垂一発で沢床に。当会の記録ではココから100メートル下にテン場があるというので、緩い瀞をラッコ泳ぎで下ると、左岸にとてもいいテン場があった。薪も大量にある。

焚き火して贅沢な夜。

 

六階滝。

ボルト連打以外の手段を思いつけない。

 

扇ノ沢出合いから泳ぎ下る。ラッコ泳ぎは楽でいい。


8/12 曇り時々雨 引き続き小又峡ゴルジュ遡行

6:00 幕場発→11:30 沼ノ沢出合→12:30 親滝下→13:10 親滝上→13:40 登山道に上がる→14:10 駐車場

 

かなりいいテン場であった。たっぷり寝れた。朝から焚き火。

起きて早速泳ぎ。扇ノ沢出合に戻る。以降昨日の繰り返し。

左岸の側壁をエイドした所以外は特段覚えていない。今日は3回くらいザイル出したが、これは足並みそろっていてもザイル必要なレベルだった。

 

扇ノ沢出合すぐさきの滝。佳滝か?

 

佳滝と思われる滝は出だしちょっと難しかったが右岸から小さく巻けた。

しかし、戻ると雨が…

以降断続的に降った。幸い渇水モードだったので増水しなかった。

 

左岸の台みたいなところを利用してA1ゴルジュ突破登り。

結果として2008年の当会の記録と同じラインと思われる。

なお、サワグルイパーティは手前から左岸をフリーで巻いている模様

 

ちょっとゴルジュが緩んだ気もするがまだまだ続く

 

この左岸はようやくまともなテンバとなりそう(標高520~530付近)。

ここまで幕場から約4時間。

後背地はスラブなので雨降ったら不快そうだが。

 

泳ぎ&へつりワールドが続く。寒い。

 

沼ノ沢出合いで一旦ゴルジュは緩み、かつ今までなかったゴーロが出てくるが、以降も親滝まで断続的にゴルジュが出てくる。親滝は左岸のリッジを登ったら、一本目の木を掴めば楽勝だろうと思ったらその上の急傾斜灌木帯と崩壊寸前の岩リッジが悪く、特に岩リッジはリッジ自体が崩壊しそうで肝が冷えた。

先を行くと何故か林道跡みたいなのがあった。これを上流に向かって少し辿ると速攻で無くなっていたが、そのまま少しトラバースしてから灌木を掴んで無理やり沢に戻る。

既に小又峡は普通の川となっていたが、もう少し歩いて、登山道が近くに来ているところで遡行を打ち切った。

 

親滝。

左岸後方の尾根に取り付いたが悪かった。

 

駐車場に戻り着替えていると鳥獣センターの方に「泊まりの場合はダッシュボード等に泊まりの旨掲示して欲しい」と注意された (遭難したかと思うので)

 

着替えたあと(着替えている時にもアブが出た)、改めて保護センターの方に謝罪し、その後雑談。

小又峡での事故再発を懸念されているようだ。まあ我々だって事故を起こしたくはないしそれなりの準備をしてきているわけだが、確かに小又峡のワンミスでハマって死亡しそうな釜が大量にある渓相&水量は他に思いつかないのも事実で、ちょっと特殊な渓谷と言う点は覚えておいたほうがいいと思う。

 

携帯の電波が入る場所を尋ねると、キャンプ場の職員が詳しいと伺えたので、展示を見てから親子キャンプ場に移動。

親子キャンプ場受付である青少年野外活動基地では「この間亡くなった●●さん(沢登りの有名人)の知り合い?彼、二度も小又峡来たから」と言われて驚いた。

青少年野外活動基地裏の空き地ではドコモの電波が入ったので会に途中経過報告して、キャンプ場に移動。アブが出なくて最高!

ちなみにキャンプ場の方によると、今年はアブが多いとのこと。


【小又峡テクニカルメモ&考察】

・足回りはゴム底しかない。ビタビタに決まる。

・風化した花崗岩でカムやハーケンはあまり決まらない。今回はゴルジュ登りでマスターカム黄色とハーケン一本、アブミ使用。(そこもサワグルイの記録では少し下流からフリーで灌木掴んで巻いてるので、ラインによっては不要)

・ザイルは30×二本。ギリ足りた。

・ライジャケは今回同行者2人は着用、私は省略。特段問題なかった。

・高巻きは、探せば灌木一本目が低めにあることが多く、見た目よりは簡単。しかし、1本を捕まえても、そこからまだ悪いところが出てくるパターンが多い。大体沢床から20メートルくらいまでは悪い。しかも雪国のくせに越後ほど藪が強くない印象。

・「これは落ちたら助からないかも」という釜や滝壺を覚えているだけで3回くらいはへつった(ランニング取れないトラバースなのでザイル出せない)。今回水量少なくても上記の通りなので、平水ならそういう箇所がもっと多いと思われ、増水してたら「助からないかも」じゃなく「まず助からない」釜がたくさん出てくると思われる。(化ノ堰を突破できるかどうかが水量のベンチマークとなるか?平水でも厳しい?)

・幕場は我々が泊まったところ以外には、標高520~530m付近までほぼ無い。

・クライミンググレード、水量、幕場等考慮すると、足並みと条件さえそろっていればさして難しくは無いと言える。ただ、絶対に増水時は止めた方がいい。

・通常大高巻きしている六階滝〜扇ノ沢間のゴルジュゾーンが今後の課題か。ワンデイでの遡行や、我々のように前日ほぼ徹夜での入渓では無理があるので、例えば初日は徹夜で運転してきて三階滝展望台(遊歩道終点)幕、二日目にゴルジュゾーンをなるべく攻めたラインで進み、我々が泊まったところで幕(あるいは縦走路から展望台に戻る。これなら往復に遊覧船が使える)、というプランニングが考えられる。しかしボルトレスは厳しそうだ。もう少し家から近ければリトライしたいのだけれど…

 

【虫対策】

今回、お盆という最盛期の割には少ないと思ったが、それでも不愉快になる程度にはアブがいる。アブは日中しか出ない。蚊は沢の中では見なかった。

アブ・蚊とも、軽いがゆえに、服と肌の間にあるスペースを自重で潰すことができない。ピッチリした薄手の服が一番ダメで、薄くてもいいから肌との間にスペースができるような服がいい。要するにナイロンヤッケがオススメ。あとは暑いけどカッパ。

防虫ネットはメットの上からでも無いよりマシ。つば付きの帽子併用でかなり効果がある。

今回着た2ミリのウエットスーツはアブの歯を通さなかったが、小又峡では良くてもトウド沢・赤水沢では暑くて着れない。

虫除けスプレーは蚊にはソコソコ効くが、アブには気持ち程度しか効かない。

 

【その他情報(一番大事かも】

・森吉山野生鳥獣センター付近は全く携帯電波が入らない。杣温泉ですら入らない。青少年野外活動基地(親子キャンプ場の管理棟)の裏の畑みたいな広場でNTTドコモが入る。

・鹿角八幡平ICから森吉方面に左折するとコンビニは1件も無い。(右折すると割とすぐコンビニがある)

・アブ、蚊が出る。アブは川の中と森吉山野生鳥獣センター駐車場にも出る。蚊は鳥獣センター~赤水・桃洞出合の間の登山道でびっくりするくらい出る。

・親子キャンプ場ではアブが出ない。最高。なお、HPに予約必要とあるが満員でない限り不要とのこと。素晴らしいキャンプサイトが無料なのでぜひ。

 

【小又峡地図(遡行概念図)】


 

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